2012年05月12日

<CD>電気グルーヴ『SHAMFUL』2012/04/18

約二年半ぶりの音源は、ロッテの新商品ガム「ZEUS」のCMソングのシングル。

コミカルなパブリックイメージをほぼ排除したクールな楽曲で、ハイスピードなアシッドハウスサウンドにのせて、意味深な様な意味の無い様な抽象的な歌詞を投げやりに歌う石野卓球のヴォーカルが強烈。

効果音を挟んでほぼノンストップで始まる2曲目の「SHAME」は、BPMはそのままだがくすんだエレピやド派手なシンセ等、より下世話度の増したハウスサウンドにのせて、ピエール瀧の無意味ラップが光る。

「出発進行、浪漫飛行」「すべての者にハラキリを、すみれの花にカマキリを」などとナンセンスにまくしたてる様子は、「SHAMEFUL」の卓球のクールさとは好対照で、各々の個性が存分に発揮されている。

2曲のBPMは同一なので、効果音の切れ目を音源編集ソフトで完全にノンストップに繋いで一気に聴くのがおすすめだ。

全編で聴こえるアナログシンセのブリープ音は非常に刺激的だが、20年以上前のオールドスクールなスタイルそのものとも言え、好みと評価は聴く者によりはっきりと分かれるだろうが、このスタイルにも大きな普遍性があると確信出来る完成度の高い名曲と言える。

折しもこの春は「SHAMEFUL」の発売以外にも、CutemenとVenus Peterのツーマンライブが発表されたり、My Bloody Valentineのシングル編集盤がリリースされたり(日本盤は5月30日発売)と、80年代後半から90年代前半の音楽を見直す機会が相次ぎ、その躁的かつニヒルなムードに、呆れたり、ノスタルジーを感じたり、リアルな熱さを感じたりと、めまぐるしい感情を呼び起こさせられる。

60年代70年代の音楽をファンダメンタルに崇める年長音楽ファンの気持も理解出来そうになる、自分にしっくりくるスタイルを再認識させられた古臭くも新鮮な名曲だ。


  電気グルーヴ HP
    http://www.denkigroove.com/
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2012年05月08日

<ライブレポ>チャラン・ポ・ランタン アクアシティお台場 2012/05/02

もも(ヴォーカル)と小春(アコーディオン)の姉妹ユニットのフリーライブ。

4月25日の樋口舞と同会場のフリーライブだが、平日ながらもGW只中ということか、買い物の一般客、ファンともに入りはまずまずの状況。

明らかにヴォーカルが大きすぎ、時折耳の痛くなる最悪のPAが災いしたのかもしれないが、スベっても気にせず喋り続ける小春の芸人魂に感心しつつも、ほぼ直立不動で淡々と歌うももの様子に素っ気ない印象を持ってしまったが、本編ラストの「愛の賛歌」では本領発揮の暴走パフォーマンスに。

曲が始まるとももはステージを降り穏やかな笑みを浮かべトレードマークのブタのぬいぐるみを抱えながら、まるでディナーショーの様に客席を闊歩。

その可憐な童顔に不釣り合いな極端に抑揚をつける迫力の歌唱を聴かせながら、女性客の長髪をいじり、男性客に至近距離から投げキッス、他の客の眼鏡を奪ってみたりと大暴れ。

「チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン」名義のCD『ただ、それだけ。』(2010)では、小春プロデュースによる極めて完成度の高いサウンドと、とても十代とは思えない魅力的な低音を聴かせるももの個性的なヴォーカルに唸りながらも、シャンソンや東欧系ブラスサウンドを優等生的にこなしている様な、もう一つ飛び抜けた何かが欲しくなる物足りなさも感じたが、この時の暴走ぶりに彼女達の魅力はライブにあると確信。

インストアイベントとしては異例のアンコールではロシア民謡「カチューシャ」を演奏。

筆者の世代には東京パノラママンボボーイズの「カサショフ」の印象があまりにも大きい哀愁のメロディだが、小春のアコーディオンの超絶技巧が繰り出すグルーヴと、もものドスの効いた低音ヴォーカルで強烈なインパクトの名演に。

淡々と演奏していたと思ったらスイッチが入ったかの様な暴走ぶりの見事な落差は、若干二十歳前後ながらもライブでの見せ方を心得ている様で、末恐ろしさを感じる。

『ただ、それだけ。』のシャンソンやバルカンサウンドから、nino trincaやメトロファルス、黒色すみれ等で聴けるジャンルを超越した雑食性ヨーロピアン音楽へ飛躍を遂げれば、更なる高みへ到達出来るだろうし、そのポテンシャルを充分に感じさせる初見ライブだった。


  チャラン・ポ・ランタン HP
    http://charan-po-rantan.o0o0.jp/
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2012年05月01日

<CD>赤い靴『サラバトーゲの街』2012/04/04

東川亜希子(vo,pf)神谷洵平(ds,プロデュース)のユニットの『コマドイルの旅』(2011)に続く2作目。

東川作の楽曲を中心に作詞に多彩なゲストを迎え神谷がアレンジというスタイルが大半を占めるのは前作同様だが、前作ではストリングスやホーンが奏でるエキゾチックなフレーズが印象的な妄想的ヨーロピアンサウンドが目立ったのに対し、今作ではバンジョーやアコースティックギターの乾いた音が強烈に響くアメリカンな演奏が際立つ。

東川のソングライティングは、Carol Kingをも思わせるドラマチックな展開が多く聴け、傑作ソロ『耳にフワァー』(2009)から更なる飛躍を見せている。

神谷のアレンジとミキシングも、生音の魅力を生かしたジャズやカントリーの影響の濃いノスタルジックなムードで、聴き心地良いサウンドメイクに大きな才能を感じさせる。

「小さな薔薇のバレッタ」は、miccaのファンタジックな歌詞にコトリンゴの緻密なピアノと、ゲスト陣の活躍もさることながら、東川の細いヴォーカルで歌い上げる壮大なメロディが強烈な名曲。

前身バンド「Bird Strike」の名曲「wondeful life」を思わせるジャジーでゴージャスなイントロが強烈な「書を持ち僕は旅に出る」は、ロックやポップス以前のアメリカ大衆音楽への憧憬が滲み出る奥の深さ。

カントリー、フォーク調の「また逢いましょう」では、物淋しいメロディと東川の声質が見事にマッチ。

前作から10ヶ月弱と短いインターバルだが、決して二番煎じにならない内容で、洋楽指向の正統派ポップスユニットとしての実力を充分に堪能できる。

ジャケット画も含めて日本人離れしたエキゾティシズムをトータルで表現する才能は、現在のシーンの中でも突出したものと言えるだろう。
タグ:東川亜希子
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2012年04月26日

<ライブレポ>樋口舞 アクアシティお台場 2012/04/25

出演 樋口舞(vo,pf) 武藤新(vln)

セットリスト

第一ステージ
01 透明
02 クラムボンウォータードロップス
03 ちっぽけな僕の歌
04 超特急亜細亜号
05 陽だまり

第二ステージ
01 透明
02 超特急亜細亜号
03 ちっぽけな僕の歌
04 クラムボンウォータードロップス
05 陽だまり


ショッピングセンター「アクアシティお台場」の室内ステージでのフリーライブ。

小柄な二人が演奏するのには少々広いステージの後方には大きなガラス窓があり、そこからはレインボーブリッッジの全景、空を舞うカモメ、通りすがりに覗き込む外国人観光客や地方からの修学旅行生と、通常のライブハウスでのライブでは絶対にあり得ない風景をバックに演奏。

平日の午後とあって、観客の大半が休憩を兼ねた中国人旅行者ばかりと、何もかもが異例の環境での2ステージだが、歌姫楽団時代にも今回の様なショッピングセンターのイベントスペースや野球場の場外や銀行の駐車場等様々なイレギュラーなライブをこなしているだけあって、動じた様子は少しも見せず堂々たるステージに。

30分弱の短時間だが、歌姫楽団の代表曲「クラムボンウォータードロップス」「超特急亜細亜号」に、未録音の名曲「ちっぽけな僕の歌」、コンピレーション盤『Cue Fanfare!』(2012)収録のソロデビュー曲となる「陽だまり」と、盛り沢山なセットリストで、ソングライター、歌手としての魅力を凝縮したライブになった。

前回見た時は樋口のピアノに硬さも感じたが、今回の演奏ではグルーヴ感が増した様に聴こえ、引っ張られるかの様にムトゥ・アラーター(樋口による紹介では「武藤新」と本名だが、ここではトゥクトゥクスキップやサードクラスで知られている「ムトゥ」と表記します)のヴァイオリンプレイもキレが増した印象。

「クラムボンウォータードロップス」「超特急亞次亜号」では主役を喰うかの様なソロを披露し、時には指弾きも加えてサウンドに厚みを持たせ、二人のコンビネーションが大きく深化したことを確認出来た。

今後はメンバーを増やし「樋口舞と天井桟敷アンサンブル」名義での活動を開始する模様で、今後の展開にも期待したい。


  樋口舞 HP
    http://maihiguchi.com/
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2012年04月25日

<CD>DCPRG『SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA 』2012/03/28

「DCPRG」とバンド名を省略した名義での新作。

ミュージックマガジン誌掲載のインタビューで菊地成孔は、「メンバーも入れ替わったので改名も検討」とまで語るが、新機軸も多いものの、ポリリズミックな変則的リズムをベースにジャズやファンクを展開するプログレッシヴな音楽性は不変で、Date Course Pentagon Royal Gardenの5年ぶりのスタジオ録音作品として純粋に楽しめる。

『Report from Iron Mountain』(2001)収録の代表曲「Catch 22」では、菊地、大谷能生、ヴォーカロイド兎眠りおんのラップをフィーチャー。

菊地&大谷のこなれていないラップは、DCPRGの持つ独特のフェイク感覚と共通する胡散臭さで、ヒップホップマナーに則った空虚な言葉使いも相俟って、空騒ぎムードを増幅。

兎眠りおんに至っては、殆ど何を言っているのか聴き取れず、無機質な早口が続くばかり。

オリジナルには少々頭でっかちな印象を持っていたが、新ヴァージョンはそのラップの空虚さと、生き生きとした演奏で、強烈な現代性とリアリティを持った名曲に生まれ変わっている。

強いて不満を挙げるならば、ホーン陣の活躍する箇所が少ないことだが、「殺陣/Ta-Te Contact & Solo Dancers」「Tokyo Girl」が同曲の別パートに当たるようにも思えるので、そちらを聴けば良いのだろう。

同じく新録の「Circle/Line」は、オリジナルにあったコーダ部「Hard Core Peace」が割愛され、尻切れとんぼな印象になっていて残念。

ヒップホップユニット「SIMI LAB」をフィーチャーした二曲は、型通りに上手いラップが災いし「Catch 22」の菊地&大谷の様な空虚なリアリティが感じられない。

ラストのMiles Davisのカヴァー「Duran」は、アメリカの詩人Amiri Barakaのポエトリーリーディングをフィーチャー。

躁的でパワフルなリーディングをサンプリングし、ずたずたに切り刻み繰り返さるハードな言葉と、プリミティヴなパーカッション、CDJのスクラッチノイズ、HM/HR的にも聴こえるラウドなギター、疾走感溢れるリズム隊の共演は、ジャンル不明の強烈なインパクトで、この作品にとどまらずバンドのキャリアの中でも最高の楽曲と言えるだろう。

ジャズの枠組みに囚われず雑多に音楽をミクスチャーし、バブル崩壊から延々と続く価値の混乱をリアルに体現するDCPRGの稀有な存在感を存分に発揮した名盤。


   菊地成孔 HP
     http://www.kikuchinaruyoshi.net/
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2012年04月24日

<ライブレポ>高野寛 下北沢 mona records 2012/04/20

出演 高野寛(vo,g)

セットリスト
01 大陸の子
02 薔薇色の悪夢
03 Eye To Eye
04 紳士同盟
05 数の論理で
06 ワンダーフォーゲル(くるり)
07 Blue Stone
08 Groove Is In The Heart(Deee-Lite)
09 暮れてゆく空
10 ここにいる(中村一義)
11 Phenix
12 新しいカメラ
13 夢の中で会えるでしょう
14 All over Starting over〜その笑顔のために〜
アンコール
01 ベステンダンク
02 虹の都へ
03 流れ星ひとつ(高橋幸宏)
04 確かな光


貴重な小会場での弾き語りライブ。

「殆どライブで演奏したことの無い曲」を中心の選曲と前振りされたが、裏ベスト的展開から後半からアンコールでの代表曲オンパレードと、密度の濃いライブに。

正統派のシンガーソングライターのイメージの人だが、意表を突くDeee-Liteのカヴァーや、後半の場の勢いに任せたノリ重視の演奏など、所々で見せる逸脱感と、オリジナル曲の極めて高い完成度との落差も楽しく、充実の二時間弱に。

穏やかなスキャットの「大陸の子」という意外な始まりから、CDでは少々硬く感じたボサノヴァリズムがアコースティックギター一本でのシンプルな演奏で自然に表現された「Eye To Eye」、対照的にアコギだけでもロック的ダイナミズム溢れる「数の論理で」、CDでのオーヴァープロデュースぶりが解消されメロディの良さがより引き立った「Blue Stone」など、前半のレア曲パートでは楽曲の良さを強調する演奏が光る。

オムニバス盤収録のCDヴァージョンは未聴だが、アコギ一本での演奏はあまりにも無謀なDeee-Liteのカヴァー「Groove Is In The Heart」が前半のハイライト。

原曲のテイ・トウワの強烈なリズム、ミス・キアーのハイテンションヴォーカルを、高野のギターと歌で再現出来たかはともかく、安定感のあるパフォーマンスの中に無謀な試みを平気で入れてくるスリリングな展開に、単なるポップス優等生にとどまらない彼の個性が象徴されている。

既発のライブ盤よりもテンポが速く感じられた「Phenix」あたりからテンションは更に高まり、最後は立ち上がっての演奏に。

安定感ある演奏は乱れないが、ライブならではのグルーヴ感溢れるプレイで代表曲を次々と演奏。

Todd Rundgrenプロデュースの緻密かつ派手なアレンジで大ヒットした「ベステンダンク」「虹の都へ」も勢いのあるアコギプレイでパワーのあるメロディがより際立つ。

豊富な音楽知識を随所に小出しにするバラエティ豊かな楽曲と、華のあるヴォーカル、YMOのサポートも務めた味のあるギタープレイを目の前で繰り出されると、その個性のあまりの真っ当さに突き抜けた存在感を感じさせられ、ヴェテランの貫禄を見せつけられた。


   高野寛 HP
     http://haas.jp/
タグ:高野寛
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<ライブレポ>中野テルヲ 高円寺 HIGH 2012/04/07

出演 中野テルヲ(vo,syn)

セットリスト
01 UHLANDSTR ON-LINE
02 Game
03 Pilot Run #3
04 Legs[More Sweetie]
05 エクステンデッド湾〜リターン小道[Version ll]
06 振動子
07 現象界パレット
08 花のまち
09 ファインダー
10 雪山(狂言小謡)
11 Pilot Run #7
12 Run Radio III
13 Computer Love
14 Run Radio II
15 恋するカプセル・エイジ
15 My Demolition Work
16 Monsters A Go Go
17 宇宙船
アンコール1
01 グライダー
02 フレーム・バッファII
アンコール2
01 Game

新作『Oscillator and Spaceship』発売記念ツアー東京2デイズの初日。

ステージにはPowerBook(!)二台、反応するとストロボが発行する赤外線センサー二台(三台?)、短波ラジオ二個、CDJ、発振器三台、白熱灯多数とその他あやしげな機材が多数で、さながらマッドサイエンティストの実験室といった趣。

その中央で激しく動き回りながら、左肘を折り曲げ右手の手刀でセンサーを反応させるお馴染みの決めポーズや、歌詞と連動した振り付けを真顔で随所にきめる、独特のビジュアル重視のパフォーマンス。

平沢進の「レーザーハープ」を軽く超える異様なセンサーパフォーマンスだが、平沢同様出てくる音はあらかじめ決められており音楽的なスリルは無いものの、シーケンサーに依存生演奏のダイナミズムの無い演奏を行うテクノミュージシャンのライブの見せ方としては最高のライブに。

後方のスクリーンには、中野の顔から手元までのリアルタイム白黒動画、既発作品のアートワークのチープなCG、古い映画か何かの粗くシュールな動画、大昔のパソコンの様なビット数の極めて少ない文字で歌詞の印象的な言葉等が次々と映し出され、中野のシリアスとコミカルが平気で共存する世界を盛り立てる。

スクリーンの動画では中野の手元の動きもたびたび映し出されて、CDJのスクラッチや短波ラジオのチューニング、モールス信号を出力する電鍵の様なものを操作する様子が見られ、KRAFTWERKのライブで特に感じた多数の音は出ているがアーティストが現在どの音を出しているのかがはっきり判らない状態が回避され、ライブ感の向上に役立っていた。

演奏中の中野は基本的に無表情だが、各種の写真では鋭い目つきをしていることが多いのに対し、意外と穏やかな表情だったり、少ないながらも愛嬌のあるMCを披露したりと、一歩間違えると無機質な印象を与える音楽性とキャラクターのギャップも面白く、会場の多数を占める女性ファンから「テルヲさーん!」とアイドルに対する様な歓声を浴びているのも納得の、魅力的な雰囲気を醸し出している。

アッパーな楽曲では、短波ラジオを持ったまま客席の前まで出てきて壮絶なチューニングノイズを披露したり、平沢進のギタープレイの様にラジオに膝蹴りを加える場面があったりと、この人のライブでなければ絶対に見ることが出来ない不思議な場面が続出、濃密な二時間弱に。


   中野テルヲ HP
     http://www.din.or.jp/~teru-o/
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2012年04月09日

<ライブレポ>辻香織『Spring Tour Final 「ひまわり」 』下北沢 lete 2012/03/24

上田禎(The Humming Brothers)と東里起(Small Circle of Friends)をサウンドプロデュースに迎えた傑作『ひまわり』(2011)の一般発売記念ツアーのファイナル。

サポートミュージシャンは参加しないギター弾き語りのみのシンプルなライブは初めて見たが、彼女の甘く豊かな声が会場の隅々まで浸透する濃密な一時に。

以前の作品では、せっかくの個性的な声がオーソドックスなアコースティックサウンドに埋もれてしまい、優等性的で平凡な印象を持っていたが、収録曲の約半数が上田プロデュースの配信アルバム『走ル恋』(2010)から一変、やや低めの声が表情豊かに迫ってくる迫力の作風に変化。

その変化は上田の完璧なサウンドプロダクションだけによるものではなく、辻のアーティストとしての成長によるものであることを証明する充実のライブになった。

アコースティックギターのプレイは特に個性的というわけではないが、彼女の最大の武器であるヴォーカルを程良く引き立たせる絶妙な演奏。

とくに、『走ル恋』収録ヴァージョンではチープなリズムと電子音が印象的だった「Pocket」では、ドラマチックなメロディが際立ち、今回のライブのクライマックスに。

『ひまわり』のリードトラック「移り気ダリア」「花びら」では、「カオリズム」と称してiPhoneアプリでシンプルなリズムトラックを再生して演奏、独特のチープなムードが面白かったが、「ポケット」同様にギターのみでの演奏で聴いてみたかったところだ。

「移り気ダリア」の気まぐれぶり、友部正人の「一本道」のナイーブさ、なぎら健壱の「休日夢の中」のやさぐれ感など、詞の世界で様々なキャラクターを次々と演じ切る様は、デビュー当時のライブを見た時は一本調子にも感じた彼女のヴォーカルスタイルが、幅広い表現力を持つ優れた歌手への成長したことを見せつけてくれた。

『ひまわり』リリース時から「かおり」の英語表記を「Kori」から「Caori」に改めている様に、アイドル的シンガーから本格派アーティストへの変身を宣言するかの様な堂々たるライブに。


  辻香織 HP
    http://tsujikaori.com/
タグ:辻香織
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2012年03月31日

<CD>中野テルヲ『Oscillator and Spaceship』2012/03/21

昨年6月リリースの『Sigmal/Noise』から約9ヵ月と、順調なペースでリリースされた新作。

独特のシンセベースや現実感の希薄なピアノに、CDJのスクラッチ、短波ラジオのチューニング音等のノイズがのる、イントロを数秒聴けばすぐにわかるテルヲサウンドが全開で、今作も独自の作風を堪能出来る。

前作以上に随所でポップなメロディが際立ち、仰々しくもどこかムーディなあまりにも独特な世界を展開。

ototoyにて先行無料配信されていた美麗バラード「フレーム・バッファ II」や「グライダー」で聴ける1994年以来活動休止中のケラ、みのすけとのユニット、Long Vacationのポップなイメージを思い起こさせる鮮烈なメロディと、中野独特の仰々しいシンセフレーズの融合ぶりは今作のハイライトと言える。

2曲とも上手ではないが美くしい声質が生きた名曲で、中野のポップな側面が強く出た名曲だ。

一方従来通りのゴリゴリとした硬質な感触も健在。

「Game」ではヘヴィなストリングス系シンセと、リズミカルなピアノが対照的な新境地。

2009年のソロ活動再開直後に販売されたCD-R『Pilot Run Vol.1』収録の「Pilot Run #7」のリメイクは、ライブ音源が突如挿入されたり、呪術的なヴォーカルが導入されたりで、混沌ぶりが大幅アップ。

元P-MODELの肩書きが無くとも十分な存在感を誇る混沌としたサウンドとインパクトの大きいメロディは、現代の電子ポップシーンでも随一の個性で、今作でもその様々な要素を聴くことが出来る。


  中野テルヲ HP
    http://www.din.or.jp/~teru-o/
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2012年03月28日

<ライブレポ>The Vivians 新宿 紅布 2012/03/09

出演 角森隆浩(vo)、小宮山聖(g,cho)、トヨカツ(b)、スガノ綱吉(ds)、アナコ(dance)
共演 The ロック大臣ズ,さよなら日本,Necomatch

セットリスト
01 お好み焼き大好き!
02 学校教育 (with アナコ)
03 恋人が医者だったらいいのにな
04 対人恐怖症ブルース
05 寿司屋にて
06 うなぎの唄 (with アナコ)

アンコール
01 鼻毛無情 (with アナコ)


ゲストに「ヨロ昆撫」のダンサーとして活躍した「アナコ」を迎えてのライブ。

昨年までのライブでは、角森隆浩の特異な楽曲を、実力派ミュージシャン達の安定感のある演奏でポップに表現といった印象だったが、2月のライブの記録音源、そして今回のライブに実際に接してみて、これまで以上にバンドとしての一体感が激増した異様なグルーヴに圧倒された。

アレンジが大きく変わった楽曲はないのだが、一曲一曲が密度の濃い充実した演奏で、角森の個性を前面に出しつつも、尖ったバンドサウンドを聴かせ、ライブという刹那の一時をとにかく楽しく踊らせるという、ロックの重要な一面を再認識させられた。

角森のヴォーカルは序盤から掠れてしまったが、最後まで声量が落ちることはなく、月初に行われたハミングブラザーズで聴かせた繊細な歌唱とはあまりにも対称的なワイルドなシャウトで、芸風の幅広さを見せつける。

ダンサーアナコは、「学校教育」で登場。

花魁風の着物姿で現れセクシーなダンスを披露、間奏では着物を脱ぎ捨て露出度の高い衣装にチェンジと、まったく教育的ではないパフォーマンスで楽曲を盛り上げる。

新曲「医者〜」は角森ソロでは発表していない、初のバンドとしての純粋な新曲。

クールでアダルトなムードのファンクナンバーで、アッパーな楽曲が並ぶビビアンズのライブでは異色の存在感。

筆者制作の歌詞字幕付きライブ動画がYouTubeで公開中の「寿司屋にて」では、小宮山聖のギターが大活躍。

サーフ風のイントロからスカの裏打ちリズム、ヘヴィなギターソロと、目まぐるしく変化するスタイルの演奏で、バンドブーム期のLÄ-PPISCHをも思わせる勢いある楽曲が更にバワーアップ。

本編ラストの「うなぎの唄」では、アナコが「うなぎバルーン」を手に再登場。

「土用の丑の日」が近くなるとスーパーマーケットに現れる販促物を振り回し客席に投げ込むパフォーマンス、拾った観客がまた放り投げたりステージに投げ返したりで、通常のライブハウスでは見られない不思議な光景が出現。

うなぎを放り投げてからは、角森と合わせてコミカルな振付を披露。

フロントの2人がエンターテイナーぶりを発揮に対抗するかの様に、演奏のテンションも最高潮、「うなうなコーラス」部の四つ打ちバスドラとファンキーなベースラインで、ビビアンズファン以外が多数を占める筈の客席フロアの盛り上がりも大変なものに。

「うなぎバルーン」の提案と提供、「寿司屋」動画制作と、筆者も積極的に関わっているバンドのため、客観的な評価など出来ないが、かつてのバンドブーム時代を思わせる、コミカルな楽曲と確実かつ勢いのある演奏で観客をとことん楽しませる強力なライブバンドに成長した姿を見せつける一夜になった。

4月17日にはライブデビューを飾った渋谷gee-geにて初の自主企画イベントを開催、勢いにのるビビアンズを一人でも多くの人に目撃して貰いたい。


  ビビアンズHP
    http://the-vivians.com/

  角森隆浩ブログ
    http://tsunomori.seesaa.net/

  ツリーマニア通信(角森隆浩最新情報)
    http://tsurry-mania.seesaa.net/


  3/9「うなぎの唄」ライブ動画


  2/9「寿司屋にて」歌詞字幕付動画
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